理事就任挨拶(2009年7月AOTS社内報)

AOTSの一員として働くことができることを心から光栄に存じます。2001年にジェトロ・ニューデリーに着任して間もない頃、AOTSデリー同窓会の会合に招かれましたが、そこで多彩で自己主張の強いインド人同士がお互いに仲良く同窓会を運営していることに驚きました。自分はフィリピンやインドなどのアジアを中心として、36年間ジェトロに勤務しましたが、考えてみればAOTS同窓会の他にこれほど多くの親日的な人々の集まりを見たことはありません。人と人とを固く結び、アジア、アフリカ、中南米等の国々において自らの国の産業発展を支える人々と緊密な繋がりを有するAOTSとその活動に対して常々敬意を抱いておりました。

 

海外の産業人材育成のための研修機関として長年にわたり多くの実績を残してきたAOTSならでは、さすがに多くの経験と知識が蓄積されています。今やAOTSの存在は日本のみならず世界共通の財産でさえあると思います。「ものづくり日本」の産業界のシーズと発展途上国の民間企業のニーズを結びつけてきたAOTSの人材育成事業は、日本の国際貢献を具体的に実現するものとして今新たに見直されていると思います。我が国の技術協力である産業人材育成事業と組織としてAOTSを維持し発展させることは日本の国益に適うものであり、発展途上国の経済産業の発展にとって益々重要であるとの認識をより一層強く感じております。

 

AOTSには、研修のために必要な様々な有形無形の財産が築かれています。最も重要なものは研修の専門ノウハウとそれを支える人的資源です。基本はAOTS職員と講師の先生方の人的ネットワークです。そして、4ヶ所ある研修センターは、毎日そこで仕事をしているAOTSの職員にとっては日常的な空間かもしれないですが、日本の中では極めてユニークな存在です。海外研修生にとっては研修の場でもあるとともに、安らぎを覚える生活の場でもあります。そこは海外研修生とAOTS職員との人的交流を促すオープンで国際性豊かな雰囲気に満ちています。

 

この研修の場から人と人との交流が始まり、世界に広がる人的ネットワークが形成されるのだと思います。世界各地において本国に帰国した研修生達が自ら組織した同窓会は、AOTSが長年築いてきた貴重な人的財産であります。同窓会が自主的に組織されるのは、先ずはAOTSでの研修成果が価値あるものであることの証左ですが、これはAOTSの公的機関としての事業継続性に由来するもので、他には絶対に真似のできないものであります。この世界に広がる人的ネットワークである同窓会を国際貢献に活用していくことは極めて価値のあることと思います。

 

ところで、現在、全ての公益法人が事業や組織のあり方について見直しを迫られている中で、AOTSも新たな時代を切り開こうと模索しています。そのために組織としてAOTSは中期計画を策定し、それを実行し、第3者機関から適正に評価を受ける仕組みを作ることが求められています。AOTSの経営に役立つことなら直ぐ出来ることはそれぞれ直ぐに実行しなければならないのですが、適正な中期計画を策定し、それを効率的に遂行するためには各部門の現場感覚に立脚した意見が反映されることが重要です。そのためには各部門との自由な意見交換を積み重ねることが不可欠ですが、幸いAOTSは自由に議論が出来る闊達な職場であると思います。

 

 

これから未来を語る上でAOTSにとって何より大切なことは、職員一人ひとりがAOTSは発展途上国の産業や経済の発展にとってかけがえのない組織であると、そしてAOTSは日本の産業界と海外の民間企業を結ぶ重要な役割を果たしており、国にとっても必要不可欠な組織であると高く評価されていることを再認識し、世間にAOTSについて少しでも多く知ってもらうように積極的に努力することだと思います。そこから新たな道が開かれて行くものと信じます。



珍しい写真を見つけました。千住消防署長から表彰されました。東京研修センター(TKC)が積極的に地域の消防活動に参加しているとの「感謝状」です。私個人がもらったものではないですが、消防署の地域活動には欠かさず参加し、積極的に発言しました。通常TKCが消防署からいただく「証明書」ではないので、AOTSとしては珍しいとのことでした。AOTSに掲げる場所がないからと、自宅に持ち帰らせられました。